ChatGPTが検索する前に「見に行く先」を決めている|自店サイトを磨いても候補に入らない理由

「AI検索に出るために自社サイトを整える」。その順番が、8月8日を境に怪しくなっています。ChatGPTは検索する前に「どのサイトの中を見るか」を先に決め始めた。計測会社Promptwatchの自社計測では、ChatGPTが裏側で自動的に投げる検索(ファンアウトクエリ)に占める「site:」演算子の比率が、8月8日に0...
「AI検索に出るために自社サイトを整える」。その順番が、8月8日を境に怪しくなっています。ChatGPTは検索する前に「どのサイトの中を見るか」を先に決め始めた。計測会社Promptwatchの自社計測では、ChatGPTが裏側で自動的に投げる検索(ファンアウトクエリ)に占める「site:」演算子の比率が、8月8日に0.37%から16.8%へ移っています。数週間は0.3〜0.5%でした。別の計測会社Nectivは、同じ現象を「全ファンアウトクエリの64%」と数えました。数字は割れる。それでも三つの独立した計測が同じ方向を指しているなら、飲食店にとっての意味は一つです。自店サイトに何を書いたかより先に、「どのプラットフォームに載っているか」が効いてくる。
KEY POINTS
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 8月8日に起きたこと | ChatGPT Searchのファンアウトクエリのうち「site:」を含む比率が0.37%→16.8%(Promptwatch自社計測・日別集計) |
| 同じ現象の、別の数字 | 「ChatGPTは全ファンアウトクエリの64%でsite:検索を行う」(Nectiv自社調査・約4,000プロンプト、同社2025年調査と同一プロンプトセット、2026年8月13日公開) |
| 一回の応答あたりの検索回数 | 平均約1.08回→約1.83回(Promptwatch、8月8日)/平均2.17回→7.61回(Nectiv、同社2025年調査との比較) |
| Grokの場合 | 全チャットの18.3%でsite:を使用。Redditは全チャットの10.5%に登場し、その10件中9件がsite:reddit.com(Peec AI、2026年4月1〜21日の調査。ChatGPTの数字ではない) |
| この分野の前提 | 公的統計が存在せず、最上位のソースが計測ベンダーの自社データ。標本も期間も違うため、数字は主体ごとに割れる |
8月8日、ChatGPTの裏側の検索に「site:」が突然現れた
比率が動いたのは、じわじわとではなく一日のうちでした。
ファンアウトクエリというのは、ユーザーの質問一つに対してAIが裏側で自動的に投げる複数の検索のことです。「新宿 個室 焼肉」と聞かれたAIが、内部で「新宿 焼肉 個室 おすすめ」「新宿 接待 焼肉」のように検索を分けて実行する。その裏側の検索に、特定ドメインの中だけを対象にする「site:」が混ざり始めた、という話です。
"The share hovered between 0.3% and 0.5% for weeks, dipped briefly to 0.15% on August 3 to 5 ... then jumped to 16-17% on August 8"
。 Promptwatch「ChatGPT site: operator fanouts」
数週間にわたって0.3〜0.5%で安定していた比率が、8月3〜5日に0.15%まで一度沈み、8日に跳ねた。同じ日、応答一件あたりの平均検索回数も約1.08回から約1.83回へ増えています(いずれもPromptwatchの自社計測)。検索の回数が増え、その増えた分に範囲指定が混ざった、という形です。
ただし数字の出どころは押さえておきたい。Promptwatchは「主要AIプラットフォームの実際のUIから260億超のデータポイントを収集している」と説明していますが、どのようなアカウントから、どういう抽出方法で集めたかという標本設計は公開されていません。公的機関の統計ではなく、計測ベンダーの自社データです。
同じ現象を、別の会社は「64%」と数えた
Nectivの自社調査では、site:の比率は16.8%ではなく64%。同じ現象を測っているはずなのに、数字はまるで揃いません。
Nectiv共同創業者のChris Long氏が8月13日に公開した調査は、約4,000プロンプト。同社が2025年に実施した調査と全く同じプロンプトセット、業種横断で均等に代表性を取ったもの。を再実行した結果です。
"ChatGPT performs a 'site:' search in 64% of all fan-out queries."
。 Nectiv『ChatGPT Tripled Fan-Out Queries: Data Study』(2026年8月13日)
平均ファンアウト数は同社2025年調査の2.17回から7.61回へ。一つの連鎖で観測された最長のクエリチェーンは、昨年の4件から今年は29件になったといいます。
ここで違和感を覚えるのが、正しい読み方だ。16.8%と64%。どちらかが嘘なのではなく、測っている母集団も期間も方法も違う。Promptwatchは日別の全ファンアウトクエリに占める比率、Nectivは約4,000プロンプトを再実行したセットの中での比率です。この二つを並べて「業界ではおよそ〇%」と平均してしまうのは、統計として何もしていないのと変わりません。
Grokはもっと露骨に、Redditの中だけを見ている
範囲を先に絞るのはChatGPT固有の癖ではありません。Peec AIの調査では、Grokは全チャットの18.3%でsite:を使っています。
この調査は2026年4月1〜21日に収集した500万件のファンアウトクエリ(ChatGPT・Perplexity・Grokの合計。エンジン別の標本サイズは非公開)を分析したもの。Redditは全Grokチャットの10.5%に登場し、そのうち10件中9件がsite:reddit.comによる検索だった、と書かれています。一件あたりの平均ファンアウト数も、ChatGPT 2.1回・Perplexity 1.4回・Grok 6.8回とエンジン間で差がある(同調査、同期間)。
念のため書いておくと、18.3%も10.5%もGrokの数字であって、ChatGPTの数字ではありません。同じ調査にChatGPTのsite:比率そのものは出てきません。エンジンを越えて数字を借りると、それだけで誤報になる。
三つの計測が重なるのは「探す前に、どこで探すか」
本質は「AIがよく検索するようになった」ことではない。「AIが検索範囲を先に決めるようになった」ことだ。
Promptwatch、Nectiv、Peec AI。三社は標本も期間も方法もばらばらで、出てくる数字も揃いません。それでも共通して指している方向は一つ。AIの検索が「キーワードで広く探す」から「信頼する場所を指定して、その中を見る」へ寄っている。
どのドメインを指定するかにも傾向があります。質問のタイプごとに、指定先は使い分けられているようです。価格やスペックならメーカーやブランドの公式サイト。医療や法律のように生活に直結する領域(YMYL)なら、政府機関(.gov)や規制当局。評価・評判ならRedditや大手レビューサイト。「海外SEO情報ブログ」の鈴木謙一氏がそう観測しています(同氏ブログでの解説。ドメイン別の頻度順位データは公開されていません)。
飲食店に引き寄せれば、想像はつくはずです。「新宿 個室 焼肉 おすすめ」に答えるAIが、内部で範囲を絞るとしたら、指定先はどこか。自店の公式サイトである可能性は、正直に言って高くない。
自店サイトを磨いても、候補に入っていない場合がある
一番きついのはここで、範囲指定が先に走ると、指定されなかったドメインは「評価が低い」のではなく「見られてもいない」。
従来のSEOは、同じ検索結果という土俵に全員が並んだ上で順位を争う構造でした。範囲指定が先に来ると、土俵そのものが変わる。ある大手グルメサイトの中だけを見に行った検索に、自店サイトのページは登場し得ません。順位以前に、候補集合の外にいる。
「ではAI向けの専用ファイルを置けばいいのか」という発想も出てきますが、少なくともGoogleははっきり否定しています。
"You don't need to create new machine readable files, AI text files, markup, or Markdown to appear in Google Search (including its generative AI capabilities), as Google Search itself doesn't use them."
。 Google『Optimizing your website for generative AI features on Google Search』(2026年7月10日更新)
これはGoogle検索についての説明で、ChatGPTやPerplexityの挙動を縛るものではない。それでも「AI用の魔法のファイル」を置けば解決という話ではないことは、公式の言葉として明示されています。
問うべきは、自店の情報がどこに、どんな形で載っているか。何を書いたかより、どこに載っているか。順序はそちらが先になりつつある。
この流れに、店としてどう備えるか
- プラットフォーム上の情報から先に整える:Googleマップ、グルメサイト、予約サイト。「範囲指定されそうな場所」に載っている営業時間・定休日・席数・コース内容が、今の実態と合っているか。自店サイトの更新より、まずこちらを見る。
- 公式サイトは「答え合わせ」の場所として置く:価格やスペックに近い質問では公式サイトが参照される傾向がある(鈴木謙一氏の解説)。コース料金・アレルギー対応・個室の有無。確定情報は自店サイトに一次情報として揃えておきたい。
- 口コミプラットフォームを「評判の在庫」として扱う:評価・評判の質問ではレビュー系ドメインが指定される傾向がある。Grokに至ってはRedditへの偏りが数字で出ています(Peec AI調査、Grok限定の数値)。日本語圏でどのドメインがその位置に来るかは各社とも未公開ですが、口コミが薄い店は「範囲の中で見つからない店」になりやすい。
- 数字そのものを追いかけない:16.8%か64%か、という議論に実務上の意味はありません。計測主体が違えば値は割れる。見るべきは方向で、その方向は三社とも同じでした。
参考資料
- Promptwatch「ChatGPT site: operator fanouts」(自社計測データ)
- Nectiv (Chris Long)『ChatGPT Tripled Fan-Out Queries: Data Study』(2026年8月13日)
- Peec AI「Patterns we see in ChatGPT query fanouts」(2026年8月19日)
- 鈴木謙一「ChatGPTがsite:検索を大幅に増やし公式・信頼できるソースを優先」
- Google Search Central「Optimizing your website for generative AI features on Google Search」(2026年7月10日更新)

