インバウンド市場はコロナ前の3倍に膨らんだ。それでも飲食店の7割は、まだ何もしていない

訪日外国人の飲食店予約はコロナ前の229%。市場は3倍近くに膨らんだ。ところがTableCheckの調査では、飲食店の72.8%がインバウンド対策を「何もしていない」と答えている。過去最大のチャンスが目の前にあるのに、なぜ現場は動けないのか。 📌 KEY POINTS 項目内容 📊 市場規模訪日客の飲食店予約...
訪日外国人の飲食店予約はコロナ前の229%。市場は3倍近くに膨らんだ。ところがTableCheckの調査では、飲食店の72.8%がインバウンド対策を「何もしていない」と答えている。過去最大のチャンスが目の前にあるのに、なぜ現場は動けないのか。
📌 KEY POINTS
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 📊 市場規模 | 訪日客の飲食店予約数はコロナ前比229.4%、韓国人客は9.5倍に急増 |
| 🚫 対策未実施 | 飲食店の72.8%がインバウンド対策を実施していない(TableCheck調査) |
| 😰 最大の壁 | 「外国語対応が難しい」が対策しない理由の第1位 |
| 💡 最も効果的な施策 | 外国語メニューの用意 → 効果を実感した店舗が最多 |
数字が語る「チャンスの大きさ」
2025年、訪日外国人数は初めて年間4,000万人を超えた。
全国約7,000店舗の予約データを集計したTableCheckのレポートが、この波の大きさを如実に示している。訪日客からの飲食店予約はコロナ前比で229.4%。一方、日本人客の予約はコロナ前の69.8%にとどまっている。つまり、日本人客が戻りきらない分を、外国人客が2倍以上のペースで埋めている構図だ。
特に目立つのが韓国人客の伸びで、コロナ前比9.5倍という驚異的な数字を記録している。台湾、東南アジアからの訪日客も過去最高を更新し続けている。
この数字を見れば、インバウンド対応は「やったほうがいい」ではなく、「やらなければ売上の柱を1本失う」レベルの話だ。
それでも7割が動けない理由
飲食店勤務者1,022名を対象にした同調査で、最も多かった回答は「何もしていない」だった。
インバウンド対策を「実施し効果を感じている」と答えたのはわずか21.0%。残りの72.8%は「何もしていない」「やめた」「検討中」にとどまっている。
対策をしない理由を聞くと、答えは明快だ。
1位は「外国語対応が難しい」。次いで「マナー面の懸念」「メニュー対応が難しい」と続く。つまり、やる気がないのではなく、やり方がわからない。特に言語の壁が、現場の足を止めている。
農林水産省の別の調査でも、訪日外国人が飲食店で最も困った場面は「料理を選ぶ・注文する際」で65.8%。「飲食店を見つける際」が32.9%。言語の問題は、店側と客側の両方が感じている共通の課題だ。
「対策した店」と「しなかった店」の差が開き始めている
21%の「対策済み」の店舗が、残り7割の客を吸い上げている。
考えてみてほしい。外国人観光客が日本の繁華街を歩いている。お腹は空いている。でも、入り口に日本語しか書かれていない店と、写真付きの多言語メニューが見える店があったら、どちらに入るか。
TableCheckの調査で「最も効果的だった施策」の1位は「外国語メニューの用意」。次いで「キャッシュレス決済」「Wi-Fi導入」だった。いずれも、大規模な設備投資ではない。
訪日外国人が最も必要だと感じている多言語ツールも、半数以上が「写真・イラスト入りメニュー」を挙げている。QRコードで多言語メニューを表示するだけで、注文時の65.8%が感じている「困った」を大幅に減らせる。
つまり、対策のハードルは思っているほど高くない。高いのは「何から始めればいいかわからない」という心理的な壁だけだ。
「3倍の市場」は待ってくれない
2026年、日本のインバウンド市場は新たな転換点を迎えている。
7月には出国税が1,000円から3,000円に引き上げられ、その税収は地方観光の振興に充てられる。政府は東京・京都・大阪への一極集中を緩和し、地方への分散を明確に打ち出している。これまでインバウンドと縁が薄かった地方の飲食店にも、外国人客が流れ始める可能性がある。
一方で、中国人訪日客は政治的要因により2026年1月に前年比61%減。特定の国に依存するリスクも顕在化した。韓国、台湾、東南アジア、欧米と、多様な国籍の客に対応できる体制が、これまで以上に求められている。
市場は確実に大きくなっている。しかし、その恩恵を受けられるのは「準備ができている店」だけだ。7割が何もしていないということは、今から始めても「早い方」に入れる、ということでもある。
💡 飲食店オーナーへの示唆
- まずは多言語メニューから:最も効果が高く、最もコストが低い施策がこれだ。QRコードで4ヶ国語メニューを表示するだけで、注文のハードルは劇的に下がる。「外国語対応が難しい」という壁は、スタッフが話す必要がなくなれば消える。
- キャッシュレス決済を入れる:訪日外国人にとって現金オンリーの店は「入りにくい店」の代名詞。クレジットカードとQR決済に対応するだけで、機会損失を防げる。
- Google Mapsの情報を整える:外国人観光客の32.9%が「飲食店を見つける際に困った」と回答している。店名の英語表記、営業時間、写真の充実——無料でできる対策が、発見される確率を変える。
- 補助金を活用する:東京観光財団の「インバウンド対応力強化支援補助金」は最大300万円。多言語メニューやキャッシュレス導入に使える。「費用がかかるから」は、もはや理由にならない。
