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進出したい国ほど、AI検索で探されている — JETRO調査と情報通信白書を重ねて見えたこと

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進出したい国ほど、AI検索で探されている — JETRO調査と情報通信白書を重ねて見えたこと

海外進出の検討資料には、市場規模も競合も規制も載ります。「現地の人がAIに聞いた時、自社の名前が出るか」は載りません。JETROの調査で日本企業が今後の事業拡大先に挙げた上位は米国・中国・EU。その行き先で生成AIを1種類以上使ったことがある人の比率は、米国75.6%・中国93.6%、EU圏で白書が測ったドイツは75.6%。日本は58.8%です(総務省調査・2026年1〜2月、対象年齢と回答数は下表)。行きたい国ほど、顧客はもうAIに尋ねて選んでいる——二つの調査を重ねると、そういう並びが出てきます。


KEY POINTS

項目内容
日本企業の事業拡大先米国40.7%・中国25.5%・EU23.6%(JETRO第24回調査、n=1,421、拡大先は最大3つまでの複数回答)
生成AIを1種類以上使ったことがある人の比率米国75.6%・中国93.6%・ドイツ75.6%/日本58.8%(総務省『令和8年版 情報通信白書』、2026年1〜2月、10〜60代、日本n=1,236・各国n=624)
露出の測り方ブランド名を入れずに「おすすめの〇〇は?」と業種・ニーズだけで尋ねる(見るAIが自社の測定方法として説明)
母語市場でも安全ではない見るAIの自社測定(2026年8月7日、ChatGPT・Gemini・Claude・Perplexityの4エンジン)では、日本語の質問で山善に言及したのは4エンジン中2つ
言語差の一般化は不可日英韓中・広東語という組み合わせで比較した公開調査は確認できていない。参照できる論文2件は、アジア言語を含まないか、要旨に具体的な数値を示していない

日本企業が挙げた行き先は、米国・中国・EU

JETROの第24回「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」で、今後海外で事業拡大を図る国・地域の首位は米国の40.7%。4年連続の首位です。

調査は2025年11月上旬から12月上旬にかけて9,647社を対象に実施され、有効回答は3,369社(有効回答率34.9%)。事業拡大先を答えたのは拡大・新規進出を希望する1,421社で、拡大先は最大3つまで選べる複数回答です。ここは読み違えやすいところで、「企業の40.7%が米国だけを狙っている」とは読めません。3枠のうち1枠に米国を入れた企業が40.7%ある、という数字です。

上位の並びは米国40.7%、中国25.5%、EU23.6%、ベトナム20.5%、台湾19.8%と続きます。台湾は5位に浮上し、4位のベトナムに迫りました。韓国は7.5%で11位、香港も7.5%で12位。

選択理由の最多は「市場規模・成長性」の86.1%(同じくn=1,421の複数回答)。対して「言語・コミュニケーション上の障害の少なさ」は21.5%で、13ある選択肢のうち6番目でした。言語は、行き先を決める理由としては上位ではなかったのです。行った後に効いてくる変数だからです。

そして海外拠点を持たない企業では「今後新たに進出したい」が45.3%と2年連続で増えています。すでに拠点を持つ企業も46.7%が「さらに拡大を図る」と答えました。

その米国と中国で、AIを使ったことがある人の比率

総務省『令和8年版 情報通信白書』が2026年1〜2月に測ったのは、日本・米国・ドイツ・中国の4か国における生成AIの利用経験率です。

「1種類以上使っている(過去にある)」の比率は、日本58.8%、米国75.6%、ドイツ75.6%、中国93.6%。テキスト生成AIに絞ると日本55.0%、米国65.4%、ドイツ66.0%、中国88.3%。いずれも2026年1〜2月のインターネットアンケートで、対象は10〜60代、有効回答は日本1,236件・米独中が各624件です。

白書には注記が付いています。

「2023年度調査・2024年度調査では、調査対象の年齢を20歳以上としていたが、2025年度調査では、新たに15歳〜19歳を調査対象に加えている。2025年度調査において、20歳以上の利用率は52.2%であった」

— 総務省『令和8年版情報通信白書(概要)』(2026年7月)

前年の26.7%と58.8%を単純に並べると母集団が違う数字を比べることになるので、前年比を語る時は同一基準の52.2%を横に置く必要があります。

企業側も測られています。自社の何らかの業務で生成AIを利用していると回答した割合は日本86.4%、米国90.9%、ドイツ91.6%、中国98.1%です。対象は従業員10人以上で2025年までにデジタル化に着手した企業の管理職以上、有効回答は日本515件・米独中が各309件。数字だけ見れば日本企業も使っています。ただし「組織的な取組はない」と答えた割合は日本が3割弱で、ほか3か国より高い(企業調査、日本n=497)。個人が勝手に使っている状態、と読めます。

一つ断っておくと、この白書が測ったのは4か国だけ。韓国・台湾・香港の利用率は、この調査には出てきません。

「行きたい国」と「AIで探す国」が重なっている

二つの調査は別の目的で作られています。片方は企業の進出意向、もう片方は個人と企業のAI利用実態。重ねる理由は何もない。それでも重ねると、拡大先の上位がそのまま「日本よりAI利用経験率が高い国」の並びになります。

米国は拡大先1位で75.6%。中国は2位で93.6%。EUは3位で、白書が比較対象にしたドイツもその圏内にあり75.6%。日本の58.8%より上です。

買い物の実データも同じ方向を指しています。経済産業省の市場調査では、中国消費者による日本事業者からの越境EC購入額は2兆6,372億円(前年比8.5%増)。これは2024年の実績で、日米中3か国間に限った集計です。JETROの調査でも、ECを利用または検討している企業のうち、具体的な販売方法で最も比率が高かったのは越境ECの45.5%でした。

ここで問うべきは「AI対策が遅れているか」ではありません。本質は、日本語で見えている景色が進出先では通じない、という一点です。自社サイトが日本語のGoogleで上位にあることと、シカゴの調達担当者が英語のChatGPTに「信頼できる日本のサプライヤーは?」と聞いた時に社名が出ることは、別の事象。前者を測っている企業は多く、後者を測っている企業はほとんど見かけません。

JETROの調査では、輸出が減少すると見込む企業(n=450、複数回答)が挙げた要因のうち「他社製品との競合の激化」が26.2%。競合と比べられる場所そのものが移りつつある時、比較の現場を見ていないのは不利です。

ブランド名を入れずに聞く、という測り方

測定の原則は一つ。自社名を出さずに聞くことです。

「〇〇(自社名)について教えて」と尋ねればAIは当然その会社について答えます。それは露出の証明にならない。実際の顧客がするように「おすすめの〇〇は?」「〇〇を比較して」と業種とニーズだけで尋ね、返ってきた回答に自然に自社が出てくるかを見る——見るAI(ミルAI)は、これを自社の測定方法としてこう説明しています。

「ポイントは、ブランド名を入れずに質問することです」

— 見るAI(ミルAI)公式サイト

見るAIの仕様では、日本語・英語・韓国語・中国語・広東語の5言語に対応し、ChatGPT・Gemini・Claude・Perplexityの4つのAIを測定します。数え方の単位は「質問1問 = プロンプト1つ × 言語1つ」。同じ質問でも言語の数だけ消費する設計になっていて、言語ごとに別々に投げて別々に記録するという前提がここに表れています。

測るのは有無だけではありません。質問は購買ステージごとに自動生成されます。認知(「〇〇とは?」)、比較検討(「おすすめを比較して」)、購入直前(「結局どれを選べばいい?」)。認知段階では出てくるのに購入直前の質問では競合だけが薦められている——この分解があると、そういう段階固有の弱点が見えます。競合側も同じ質問で集計され、Share of Voice(言及シェア)と平均順位で比較され、AIが回答の根拠にした引用元ドメインまで記録される。競合を押し上げている媒体が分かるということは、次に狙う露出先のリストが手に入るということです。

実測の例が一つ公開されています。見るAIが2026年8月7日に「コスパの良い家電・生活家電のおすすめブランドは?」という質問を4エンジンに投げた自社測定で、実在ブランドの山善は日本語で「FOUND #4位」、BRAND MENTIONは50%。見るAI自身の説明では「日本語でも、山善に言及したのは4エンジン中2つだけ(Perplexity 4番目・Geminiはリスト中盤)」でした。これは見るAIの自社測定であり、第三者の検証を経た数字ではありません。

それでも示唆は残ります。母語である日本語の、しかも一般的な質問でこうなるなら、英語や韓国語で一度も測ったことのない企業が「たぶん出ているだろう」と考える根拠は、どこにもないのです。

「言語で答えが変わる」は、どこまで言えるのか

正直に書きます。「AIは言語ごとに答えが違う」と言い切れるだけの公開データを、私たちは持っていません。

日本語・英語・韓国語・中国語・広東語という、この組み合わせでAIの回答を横並びに比較した公開調査は、探した範囲では見つかりませんでした。近いものは二つあります。

一つはarXivのプリプリント(2025年2月投稿・2025年8月改訂)。対象モデルはGPT-4・Claude Sonnet・GPT-3.5、タスクは大学出願・旅行・移住で、比較したのは英語・フランス語・日本語・中国語・ドイツ語・韓国語の6言語です。

「local language bias is prevalent across different tasks」

— arXiv:2502.17945 (プリプリント、2025)

GPT-4とSonnetはGPT-3.5より英語圏偏重を減らしたものの、堅牢な多言語アラインメントには至っていないという整理でした。要旨に具体的な数値は示されておらず、査読前の原稿です。

もう一つは2026年4月のarXiv論文。対象はClaude Sonnet 4.6の単一モデルで、12のプロンプト × 6言語 × 3回、計216応答を集計しています。

「French responses are approximately 30% longer than German responses on identical prompts」

— arXiv:2604.27137 (2026年4月)

ただしその6言語は英語・フランス語・ルーマニア語・スペイン語・イタリア語・ドイツ語で、アジア言語は入っていません。

だから言語差を一般論として断定することはできない。できるのは、自社のブランドについて、自社が出たい言語で、実際に投げて記録することだけです。統計が無い領域では、自前の測定値を持っている企業と持っていない企業の差が、そのまま情報格差になります。

GEOはSEOの外にあるのか

Googleの公式ドキュメント(2026年7月10日更新)は、こう書いています。

「From Google Search's perspective, optimizing for generative AI search is optimizing for the search experience, and thus still SEO」

— Google Search Central「AI optimization guide」(2026年7月10日更新)

読み落としてはいけないのは冒頭の条件です。これはGoogle Searchの視点に限った話であり、ChatGPT・Claude・Perplexityは対象に入っていません。同じドキュメントは、第三者のAEO/GEOサービスにも注意を促しています。

「If you're considering third-party "AEO" or "GEO" advice or services, review our guidance on evaluating third-party SEO advice」

— Google Search Central「AI optimization guide」(2026年7月10日更新)

効果の側に触れた研究もあります。KDD 2024で発表された論文は、こう報告しました。

「we demonstrate that GEO can boost visibility by up to 40% in generative engine responses」

— Aggarwal et al.「GEO: Generative Engine Optimization」(KDD 2024)

評価に使われたGEO-benchは「10000 queries from diverse domains and sources」で構成され、40%は"up to"——上限値であって平均ではない点に注意が要ります。

切り分けの基準はさほど複雑ではありません。Google Searchの中で起きることは、既存のSEOの延長で考えられる。その外側にいる各AIの回答は、測らないと分からない。海外市場では、その「外側」に顧客が先に着いています。


海外進出を考える企業への示唆

  1. 進出前調査のリストに、現地語でのAI露出を一行足す:JETROの調査で拡大先の選択理由の最多は「市場規模・成長性」86.1%(n=1,421、複数回答)。市場が大きいことと、その市場で自社が候補に挙がることは別の問いです。
  2. 自社名を入れずに聞く:「おすすめの〇〇は?」「〇〇を比較して」。実際の顧客の聞き方でなければ、露出を測ったことになりません。
  3. 競合が引用されている媒体を控えておく:AIが根拠にした引用元ドメインは、そのまま次に狙うべき露出先の候補になる。
  4. 公開統計の空白を自覚する:総務省の白書が測ったのは日本・米国・ドイツ・中国の4か国。韓国語圏・広東語圏の数字はここには無く、自社で測った値を持つ企業だけがその空白を埋められます。

稟議書に載る数字は、たいてい市場の大きさです。載らない数字は、その市場のAIが自社を何番目に呼ぶか。前者は調査を買えば手に入りますが、後者は自分で聞いてみるまで誰も教えてくれません。

参考資料

#AI検索最適化#GEO#海外進出#多言語対応#飲食店DX
日高 駿

日高 駿

株式会社MenuMenu 代表取締役

ソフトウェアエンジニアであり、UI・UXデザイナー。2012年からシリコンバレーと韓国でプロダクトをつくり、いまは福岡で。SEO・MEO・GEOの専門家として、訪日観光客と日本のローカルビジネスをつなぐMenuMenuを自ら設計・開発しています。

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