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Schema.org v30.1で商品の語彙が増えた|Googleの販売者リスティング文書に新しい語彙は一つも出てこない

日高 駿10分で読めます
Schema.org v30.1で商品の語彙が増えた|Googleの販売者リスティング文書に新しい語彙は一つも出てこない

「Schema.orgに商品の新しいプロパティが入った。日本の商品ページにも足してほしい」。海外本社の開発チームからこう頼まれた日本の担当者は、2026年9月以降、増えているかもしれません。語彙が増えたのは本当です。ところが、増えた語彙を検索エンジンが読むかどうかは、Schema.orgではなく、検索エンジン側の文書に書いてあります。

Schema.org v30.1(2026年9月16日公開)は、ProductにconsumerNotice・isOftenBoughtWith・specificationなどEC向けのプロパティと、EUのデジタル製品パスポート(DPP)の語彙を追加しました。Googleの販売者リスティング(Merchant listing)構造化データ文書は、英語版・日本語版の全文を検索しても、この新しい語彙を一つも載せていません。Googleの日本語文書「AI 機能とウェブサイト」は「特別な schema.org の構造化データを追加する必要もありません」と書いています。先に手を付けるのは新語彙ではなく、price・availability・shippingDetails・hasMerchantReturnPolicyの値が商品ページの表示と一致しているかの点検です。

この記事は引用層(AEO)の話です。対象は製品ページ、主にECの商品ページ。語彙の原文(Schema.orgのリリースノートとGitHubのプルリクエスト)、Googleの文書(英語・日本語)、欧州委員会の公式ニュースを突き合わせました。


30秒でわかる

項目内容
ひとことでSchema.orgに語彙が「ある」ことと、Googleがそれを「読む」と書いていることは、別の組織の別の文書
製品ページでの意味v30.1の新プロパティは、Googleの販売者リスティングの必須・推奨プロパティ表に載っていない。入れることを禁じる記述もないが、効果を示す記述もない
日本での適用範囲Schema.orgの語彙は国を問わない標準。Googleの販売者リスティング文書は全地域共通の一つの文書で、日本語版にも新語彙は出てこない。DPPはEU市場で販売する者が対象(欧州委員会ニュース)
なぜ今v30.1は2026年9月16日公開。海外本社の開発チームが実装を言い始める時期に重なる

「語彙に追加された」は、何が決まったことなのか

決まったのは書き方。読み手が誰かは、まだ決まっていません。

Schema.orgのリリースノートは、v30.1を次の一文で要約しています。

"Version 30.1 - Add vocabulary to support discovery of EU Digital Product Passports, Add vocabulary to express common eCommerce product data, Misc. schema, doc, and infra updates."

Schema.org「Schema.org Releases」(Version 30.1、2026-09-16)

EC向けの追加は、GitHubのPR #4880(2026年8月25日マージ)が本体です。Productに付くのがconsumerNotice(安全警告や必須記載などの消費者向け注記)、isOftenBoughtWith(一緒に買われることが多い商品)、specification(仕様をセクション名で束ねる)。用語ページはspecificationを、厳密な小売の商品仕様向けに、additionalPropertyよりすっきりした代替と説明しています。OfferにはitemPopularity(販売ランクや人気度)、ShippingRateSettingsにはminimumOrderValue(最低注文額)、価格種別の列挙にはMaximumRetailPriceが加わりました。itemPopularityについて用語ページは、自己申告の宣伝ではなく、プラットフォームやカタログ全体での比較順位を示すためだと書いている。

DPPの語彙はPR #4871(2026年8月17日マージ)です。DigitalProductPassportクラスがCertificationの下に置かれ、ProductとOfferから張るhasDigitalProductPassportが追加されました。用語ページには「Equivalent Property: gs1:dpp」とあり、IANAの'dpp'リンク関係とGS1 Web Vocabularyに揃えたと書かれています。importer・authorizedRepresentative・recycledContentPercentage・substanceOfConcern、Certificationのサブクラスとして EnvironmentalProductDeclaration・DeclarationOfConformityも、同じPRに含まれる。

見落としやすいのは、どの用語ページにも同じ注記が付いていることです。

"This term is in the "new" area - implementation feedback and adoption from applications and websites can help improve our definitions."

Schema.org「isOftenBoughtWith」ほか各用語ページ(V30.1)

定義はまだ動く段階で、使われ方を見て固める、という宣言です。同じv30.1のノートには「Promote terms from pending to GA (generally available) based on adoption」という項目もあります。Schema.orgは採用を見て語彙を昇格させる側であって、検索エンジンが何を読むかを決める側ではありません。

Googleの販売者リスティング文書を、全文で検索した

英語版・日本語版のどちらにも、v30.1の新しい語彙は出てきません。

Googleが商品ページの構造化データについて書く中心の文書は「販売者リスティングの構造化データを追加する方法」です。文書は、読み方を先に決めている。

コンテンツがリッチリザルトとして表示されるようにするには、必須プロパティを含める必要があります。また、推奨プロパティを使用すると、構造化データにより多くの情報を追加でき、ユーザー エクスペリエンスの向上につながります。

Google 検索セントラル「販売者リスティングの構造化データを追加する方法」(日本語版)

必須プロパティは、Productがname・image・offers、Offerが「price または priceSpecification.price」とpriceCurrency。推奨プロパティにavailability・hasMerchantReturnPolicy・itemCondition・priceValidUntil・shippingDetailsなどが並びます。色・サイズ・素材の説明は、Google Merchant Centerヘルプの属性を参照する形で書かれています。

2026年10月30日時点で、英語版・日本語版の全文(ナビゲーションを含むページ全体)を対象に、8語を単語単位・大文字小文字を区別して検索しました。8語はconsumerNotice・isOftenBoughtWith・specification・valueGroup・itemPopularity・minimumOrderValue・MaximumRetailPrice・DigitalProductPassportです。日本語版は0件。英語版で引っかかったのは「specification」の7か所だけで、全てpriceSpecificationか「price specification」、左側のナビゲーション(文書一覧)の「robots.txt specification」の文脈です。プロパティspecificationの用例ではありません。商品スニペット(Product snippet)の文書と、Product構造化データの概要文書でも、同じ左側ナビゲーションの「robots.txt specification」1か所を除いて0件でした。

この文書は地域ごとに分かれていません。地域の注記は本文の中に書く作りで、例えば単価表示については「容量・長さ・重量で販売する商品について、EU、ニュージーランド、オーストラリアで特に重視される」と英語版に明記されています。新語彙には、こうした地域注記もありません。日本語版だけに何かが足されている、ということもない。

AI機能の文書は「特別なschema.orgは不要」と書く

Googleが構造化データについてAI機能向けに挙げる行動は、「足す」ではなく「一致させる」。

AIによる概要やAIモードに表示されるための準備を説明する日本語文書「AI 機能とウェブサイト」は、SEOの基本を箇条書きにした上で、こう締めています。

AI 機能で表示されるために、新たにコンピュータが解読可能なファイルや AI テキスト ファイル、マークアップを作成する必要はありません。また、特別な schema.org の構造化データを追加する必要もありません。

Google 検索セントラル「AI 機能とウェブサイト」(日本語版)

同じ箇条書きの中に、構造化データに触れる行が二つある。「構造化データ をページに表示されるテキストと一致させます。」「Merchant Center と ビジネス プロフィール の情報が最新のものであることを確認します。」英語版も同じ内容で、「There's also no special schema.org structured data that you need to add」という一文がある。

本質は「足りない語彙」ではなく「一致しない値」

辞書に単語が載ったことと、相手がその単語を聞き取ることは別です。

Schema.orgは辞書を編む側です。語彙を増やし、使われ方を見て定義を固める。Googleは、その辞書のどの単語を自分の検索機能で読むかを、自分の文書で宣言する側です。二つの文書は、組織も更新のタイミングも違います。語彙が増えた日に、読む側の表が増えるわけではない。

では担当者の工数はどこに向くべきか。Googleの文書は、既存プロパティの値がずれたときの扱いを具体的に書いている。

priceValidUntil プロパティに過去の日付を指定すると、リスティングが表示されない可能性があります。

Google 検索セントラル「販売者リスティングの構造化データを追加する方法」(日本語版)

販売者リスティングには「0 より大きな値の価格が必要」とも書かれています。既存プロパティには、値がずれたときの不利益が文書に明記されている。新語彙には、利益も不利益も書かれていない。優先順位は、この差で決まります。税込表示のページにマークアップは税抜、在庫切れの商品にInStock、ページの送料と違うshippingDetails。日本語ページで起こり得るずれは、この種のものです。

DPPの語彙は、誰の仕事か

欧州委員会の説明では、対象はEU市場で販売する者です。日本の商品ページの検索露出とは別の文脈にあります。

欧州委員会環境総局は2024年7月19日のニュースで、持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)の発効を伝え、DPPについてこう書いている。

"For the first time in the EU, novel Digital Product Passport requirements will be launched for all products regulated under the ESPR."

European Commission, Directorate-General for Environment「Sustainable products to become norm for consumers as new law enters into force」(2024-07-19)

同じニュースは、ルールは製品群ごとに順次導入され("rolled out progressively for individual product groups")、整った時点で「EU市場で販売しようとする全ての者」に適用されると書いています。条文の番号や製品群ごとの時期は、この記事では扱いません。

Schema.org側の動きは一歩早い。v30.0(2026年3月19日)で既にDPPの例がUN/CEFACTコードに揃えて追加され、v30.1で語彙本体が入りました。「検索エンジンや意味論的な消費者がDPPを発見するための語彙」という位置付けは、PR #4871の本文に書かれています。

日本市場だけで売る韓国・米国ブランドにとって、この語彙は検索の話ではなく規制対応の話です。EUにも売るなら海外本社のコンプライアンス担当の領域で、日本の担当者が日本語の商品ページで先に触るものではありません。

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本国の要望に返事をする前に、売れ筋1商品で表示とマークアップを並べます。

  1. 表示を書き出す:売れ筋1商品のページを開き、画面に出ている価格(税込か税抜か)、在庫表示、送料、返品条件を一つの表に書く。
  2. マークアップを隣に置く:同じページのJSON-LDからoffers.price・priceCurrency・availability・priceValidUntil・shippingDetails・hasMerchantReturnPolicyの値を取り、同じ表の隣の列に置く。一つでも違えば、それが最初の修正です。
  3. Googleのツールで確かめる:Google 検索セントラルの手順通り、リッチリザルト テストにURLを入れて重大なエラーを直す。文書は「重大ではない問題の修正も検討してください」とも書いています。結果の画面は日付を付けて残す。
  4. Merchant Centerと同じ源か:Merchant Centerにフィードを出しているなら、フィードの価格・在庫と構造化データの値が同じデータから出ているかを確認する。Googleの日本語文書が「最新のものであることを確認します」と書いているのは、この部分です。
  5. 海外本社への返事を一行で:「Googleの販売者リスティング文書(英語・日本語)にv30.1の新語彙は載っていない。入れること自体は妨げないが、先に既存プロパティの一致を直す」。Googleの日本語版の文書をそのまま添えれば、翻訳を挟まない報告になる。新語彙を入れたい場合は、「new」エリアの定義が変わり得ることを前提に、追従の担当を決めてから。

この記事では、新語彙を入れたページをリッチリザルト テストに通す再現は行っていません。ツールが新語彙をどう扱うかは、読者が自社ページで確かめるのが一番早い。その画面は、海外本社に見せる材料にもなります。

日本進出ブランドの担当者への示唆

  1. 三つの文書を分けて読む:語彙があるかはSchema.org、検索が読むかはGoogleの文書、義務かどうかはEUや各国の規制。一つの文書で三つを判断しない。
  2. 点検の記録を残す:リッチリザルト テストの結果とページ表示の対応表を月に一度残しておけば、海外本社から次の語彙の話が来たときに、同じ表で答えられます。

参考資料

#AI検索最適化#構造化データ#Schema.org#EC#日本進出
日高 駿

日高 駿

株式会社MenuMenu 代表取締役

ソフトウェアエンジニアであり、UI・UXデザイナー。2012年からシリコンバレーと韓国でプロダクトをつくってきました。SEO・MEO・AEOの専門家として、訪日観光客と日本のローカルビジネスをつなぐMenuMenuを自ら設計・開発しています。

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