Claudeで「AI検索の出典」を偽装する行為、11月12日から明文で禁止|ステマ規制と重なる所・重ならない所

Anthropic が10月8日に出した利用ポリシー(Usage Policy)改定の発表文は、欺瞞的な活動を扱う新しい章を変更点の先頭に置きました。それでも、AI検索の担当者が押さえるべき一行はそこに出てこない。11月12日に施行される本文を開くと、その章の禁止項目の4つ目に書いてあります。
新しい利用ポリシーは、Claude を使って「検索エンジンやAIが答えを引いてくる出典」に、出所・作成者・独立性を偽ったコンテンツを仕込む行為を名指しで禁じました。禁じられたのは GEO という手法ではなく、Claude を使った出所の偽装です。日本のステマ規制(景品表示法の告示)とは「事業者が作ったものを第三者の声に見せる」という構造で重なり、誰を縛るか・何で縛るか・AIに触れているかでは重なりません。
この記事は引用層(AEO)の話です。AIの答えにどの出典が引かれるか、その出典づくりに関わる規約と法律を扱います。対象はブランドとサイト。ブランドの GEO/SEO 担当と、日本市場に入る韓国・米国ブランドの日本担当、それを支援する代理店に向けて書きます。
発表文は「検索エンジン」に触れていない
10月8日の発表文は、欺瞞的な活動の新しい章を変更点の最初に挙げています。ただ、その説明は偽アカウントや捏造ニュースサイトが中心で、検索エンジンには触れていません。
Anthropic は毎年、利用ポリシーを改定しています。今回の版の施行日は11月12日。発表文は変更点を小見出しで並べていて、最初に来るのが「欺瞞的な活動」を扱う新しい章です。選挙、兵器、監視、高リスク用途、モデルへの悪質な言動、提供地域の方針がその後に続きます。
"We've consolidated those rules into a new section titled Do Not Engage in Deceptive Campaigns or Artificial Activity, which applies to deceptive activity of any kind (whether political or commercial)."
Anthropic「2026 Usage Policy update」(2026年10月8日)
章の名前は「欺瞞的なキャンペーンや人為的な活動に関与しない」。政治か商業かを問わず、欺瞞的な活動全般に適用するという説明です。背景として発表文が挙げるのは、Claude で偽アカウントと捏造ニュースサイトのネットワークを運営していた例です。運営していた側には、国営メディアや政府の宣伝機関と並んで、営利企業(commercial firms)が入っています。こうした行為は以前から禁止していて、選挙・詐欺・プライバシー・偽情報の各章に散らばっていたルールを一つにまとめた、とも書いている。
発表文の説明はここで終わります。章の中身は「メッセージの背後に誰がいるかを隠すこと、偽アカウントや偽投稿でコンテンツを広げること、影響工作の道具を作ること」と要約されるだけで、検索エンジンにもAIの答えにも触れていません。発表文だけを追うと、この一行には行き着けない。
検索エンジンとAIの「出典」は、ポリシー本文の禁止項目に書かれている
本文の新しい章には6つの禁止項目が並び、その4つ目が「検索エンジンやAIが答えを引く出典」を名指ししています。
章は "This includes using our products or services to:"(当社の製品・サービスを使って次のことをすることを含む)という一文で始まり、項目が続きます。4つ目がこれです。
"Manipulate the sources from which search engines or AI systems draw answers by seeding them with content that misrepresents its origin, authorship, or independence (e.g., networks of sites posing as unaffiliated sources corroborating the same claims)"
Anthropic「Usage Policy」(2026年11月12日施行)
検索エンジンやAIシステムが答えを引いてくる出典を、出所・作成者・独立性を偽ったコンテンツを仕込むことで操作する。例として挙がっているのは、互いに無関係な出典を装い、同じ主張を裏付け合うサイトのネットワークです。
GEO の現場にいる人なら、どの手口を指しているかはすぐに分かるはずです。複数の出典が同じことを言えば、AIはそれを答えに採るだろう。そう見込んで、運営元を伏せた比較サイトやランキング記事を何本も立て、同じ製品を推させる。例示はその形を、ほぼそのまま書いています。
前後の項目と並べると、線がどこに引かれているかが見えてきます。
| 順番 | 禁止項目(要旨) |
|---|---|
| 1つ目 | 出所や帰属、意見の広がり、人間かどうかを誤認させるための偽のペルソナ・アカウント・メディア・組織の運営、実在の人物や組織へのなりすまし。例示に sockpuppets、astroturfing(草の根を装った世論づくり)、fake reviews(偽レビュー) |
| 2つ目 | 世論や当局者、その他の意思決定者に影響を与えるためのコンテンツについて、スポンサーを偽る、または意図的に隠す |
| 3つ目 | 共通の出所から来ていることを隠すために、偽の、あるいは独立を装ったメディア・サイト・アカウントのネットワークでコンテンツを流通させる |
| 4つ目 | 検索エンジンやAIが答えを引く出典を、出所・作成者・独立性を偽ったコンテンツで操作する |
| 5つ目 | 欺瞞的なキャンペーンを可能にするための道具・システム・インフラの構築、改良、維持への関与 |
| 6つ目 | 上記のいずれかを製品やサービスとして売り込む、販売する、資金を募る |
3つ目と4つ目を比べると、違いは文面に出ています。3つ目は共通の出所を隠したコンテンツの流通そのもの、4つ目は検索エンジンとAIが答えを引く出典の操作。出所を隠す行為の禁止を、AIの答えの出典という対象にまで明示的に延ばした格好です。
代理店が見落とせないのは6つ目です。
"Market, sell, or solicit funding for any of the above as a product or service"
同上
「上記のいずれか」が指すのは同じ章の前5項目全てで、4つ目の出典操作も入ります。この項目も "using our products or services to" の下に並んでいるので、Claude を使ってそうしたサービスを売り込むこと、と取るのが文面通りです。手を動かす制作だけでなく、営業資料や提案書を Claude で作る段階まで射程に入る、と解せます。
GEO 全体ではなく、Claude の利用者を縛る規則
条項が縛るのは Claude に入力を送る人です。ウェブ上の施策を直接取り締まる法律とは性格が違います。
適用範囲は、ポリシーの冒頭に書かれています。Anthropic の製品・サービスに入力を送る人は、全て「利用者」。Claude.ai や Claude Code などのアプリを使う個人も、API や開発者向けプラットフォームを使う開発者と企業も含まれます。クラウド事業者や正規リセラーを通じて Claude を使う顧客、Claude を組み込んだ製品やサービスのエンドユーザーも同じ扱いです。新しい章が置かれているのは、全利用者・全用途に適用される「Universal Usage Standards」の中。
違反が疑われたときの扱いも、冒頭の段落にある。
"If we suspect that you may have violated our Usage Policy, we may warn you or throttle, limit, suspend, or terminate your access to our products and services."
Anthropic「Usage Policy」(2026年11月12日施行)
警告、速度制限、利用の制限、停止、利用の終了。どれも Anthropic の製品・サービスへのアクセスに対する措置です。ウェブ上に出たサイトの順位や表示を直接どうにかする話ではない。条文に地域の区別もなく、日本の担当者が使っても適用される文面は同じです(どの地域から使えるかは、別の Supported Regions Policy が定めています)。
ここを取り違えると、二つの方向に誤ります。「GEO が禁止された」と受け取れば、出所を明かした正当な情報発信まで止めてしまう。逆に「自社は Claude を使っていないから関係ない」と考えれば、制作を委託した先が何を使っているかを見落とします。条項の要件は出所・作成者・独立性を「偽る」ことです。運営元を明記した自社メディアや、関係を開示した寄稿は、少なくともこの項目の書き方には当てはまりません。
「前は禁止されていなかった」わけでもありません。2025年9月15日施行の前版にも、偽のレビュー・コメント・メディアを作ることを禁じる項目があります。
"Generate deceptive or misleading digital content such as fake reviews, comments, or media"
Anthropic「Usage Policy」前版(2025年9月15日施行)
偽のペルソナで出所を偽ることを禁じる項目も、前版にありました。前版になかったのは「検索エンジン」と「AIの答え」という言葉です。米国の SEO 専門メディア Search Engine Journal も前版と比べ、前版は検索エンジンやAIの答えに触れていなかったと指摘しています。同時に、それは前版がその行為を許していたという意味ではない、と注記している。
ステマ告示と重なるのは「事業者の表示を第三者の表示に見せる」構造
日本のステマ規制が問題にするのは、事業者の表示なのに第三者の表示に見えるものです。出所や独立性を偽って出典を仕込む行為と、構造の形が似ています。
2023年10月1日、景品表示法第5条第3号に基づく告示(令和5年内閣府告示第19号)が施行されました。指定された表示は次の通りです。
事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの
内閣府告示第19号「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」
消費者庁の運用基準は、告示が何を対象にするかを一文で言い切っています。
告示が対象とするのは、事業者の表示であるにもかかわらず、第三者の表示のように見えるものである。
消費者庁「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(2023年3月28日)
運用基準は、外形上は第三者の表示に見えても、事業者が表示内容の決定に関与したと認められる場合、つまり客観的な状況から第三者の自主的な意思による表示内容と認められない場合は、事業者の表示になるとしています。例に挙がるのは、第三者の SNS や口コミサイトに自社の商品について表示させる場合や、アフィリエイターに委託して表示させる場合です。
自社サイトの中も例外ではありません。運用基準は、事業者自身のウェブサイトは通常なら事業者の表示だと明らかだとした上で、ただし書きを付けています。専門家や一般消費者などの第三者の客観的な意見に見えるページが、実際には事業者が依頼・指示して書かせたもの、あるいは事業者自身が作成したものである場合は、事業者の表示であることを明瞭に表示しなければならない。
Anthropic のポリシーが言う「出所・作成者・独立性を偽る」と、告示の「事業者の表示なのに第三者の表示に見える」。言葉は違っても、受け手が「利害のない誰かの声だ」と受け取るように作る点を問題にしている、という構造は共通しています。
ここで言えるのは、二つの文書が同じ形を問題にしているという比較までです。個別の施策が告示に当たるかどうかは、事業者が表示内容の決定に関与したかどうかなど、客観的な状況に基づいて決まり、その判断は消費者庁などの領域です。この記事で結論を出せる話ではありません。
重ならない所は、誰を縛るか・何で縛るか・AIに触れているか
二つは縛る相手が違います。告示が対象にするのは原則として広告主である事業者で、Anthropic のポリシーは Claude を使う人全てを対象にしています。
| 観点 | Anthropic 利用ポリシー | ステマ告示(景品表示法) |
|---|---|---|
| 性格 | 製品・サービスの利用規則 | 法律に基づく告示 |
| 縛られる人 | Claude の利用者全て(ポリシー冒頭の定義通り) | 商品・サービスを供給する事業者(広告主)。依頼を受けたインフルエンサー等の第三者は原則として対象外 |
| 対象の行為 | 政治・商業を問わない欺瞞的な活動のうち、Claude を使ったもの | 事業者が自己の商品・役務の取引について行う表示。使う道具は問わない |
| 違反が疑われたとき | 警告、速度制限、利用の制限・停止・終了(Anthropic の製品・サービスへのアクセス) | 景品表示法上の手続き(この記事では扱わない) |
| 検索エンジン・AI | 条文に明記 | 運用基準の全文に、AI・生成・検索エンジンの語はない |
実務で一番効くのは「縛られる人」のずれです。消費者庁の説明は明快で、規制の対象は商品・サービスを供給する事業者(広告主)であり、企業から依頼を受けたインフルエンサー等の第三者は対象にならない、としています。ただし同庁の Q&A は、インフルエンサー等が広告主と共同して商品等を供給している例外的な場合には、その人も規制の対象になると補足しています。
日本市場に入るブランドが、比較記事の量産を代理店に任せたとします。告示の下で問われるのは、表示の主である広告主のブランドです。Anthropic のポリシーの下で問われるのは、Claude に入力を送った利用者。代理店が Claude で記事を作っていれば、代理店のアカウントが当事者になります。法律の側ではブランドが、規約の側では手を動かした側が問われ得る。
AIへの言及にも差があります。運用基準の全文を「AI」「人工知能」「生成」「検索エンジン」で検索しても、該当はありません。「AIの答えもステマ規制の対象になった」とは、告示と運用基準の文面からは言えない。AIに拾わせる目的で作った比較記事でも、記事そのものはウェブ上に人が読める形で存在します。運用基準が例に挙げる口コミサイトやアフィリエイトの表示と、形の上では近い。ただ、AIの答えを経由して届く表示をどう扱うかは、運用基準のどこにも書かれていません。
「誰が書いたか」を偽る設計は、規約でも法律でも同じ所で止まる
本質は、GEO の手法に新しい禁止が一つ増えたことではない。AIの答えに載るための近道として「出所を偽る」選択肢に、道具の規約の側からも名前が付いたことです。
告示は、事業者の表示を第三者の声に見せることを問題にしてきました。Anthropic のポリシーは、出所・作成者・独立性を偽った出典を検索エンジンとAIに仕込むことを名指ししました。根拠も対象者も違う二つの文書が、「誰が書いたかを偽る」という同じ一点を見ています。
差が出るのは、引用されたあとです。その出典が誰のものかを説明できるかどうか。説明できない出典でAIの答えに載っても、それは規約の側からも法律の側からも、いつ崩れてもおかしくない足場に立っていることになります。
なお、この記事が確かめたのは Anthropic の利用ポリシーだけで、他社のAIツールの利用規約は確認していません。Claude 以外で同じことをすれば問題ない、という意味ではありません。告示のほうは、使う道具を問わない。
自社サイトに載せる口コミについては、Google がレビュー構造化データのガイドラインに追記した一文を、「見せかけの口コミ」をめぐる記事で読んでいます。今回の話と並べると、口コミと出典の両方で「出所を明かす」側に線が引かれているのが分かります。
日本の担当者が今週確かめること
- 運用中・発注中の GEO 施策を、出所の観点で棚卸しする:「互いに無関係に見えるサイトで同じ主張を繰り返させる」形の施策がないかを見ます。比較サイト、ランキング記事、まとめ記事、口コミの出稿先ごとに、運営元と自社との関係を一覧にする。自社サイト内の「専門家のコメント」「利用者の声」も、自社の依頼や作成なら、そのことが明瞭に書かれているかを同じ表で確認します。期限の目安は施行日の11月12日です。
- 代理店契約と制作フローで、Claude の使用を確かめる:Claude.ai、Claude Code、API、クラウド経由、Claude を組み込んだライティングツールのどれか一つでも使っていれば、代理店は利用者に当たります。発注書や契約に、出所・作成者を偽る制作をしないことと、使っているAIツールの申告を入れておく。社内の制作チームも同じです。
- 日本に入るブランドは、本国の手法をそのまま持ち込まない:本国の代理店が提案する「第三者メディア網」は、Claude で作れば Anthropic のポリシーの問題になり、日本で出せば広告主である自社の表示として告示の下で問われ得ます。景品表示法上の評価が必要な施策は、日本の専門家に確認してから出す。本社への報告には、規約と法律で縛られる相手が違うことを一行で添えておくと、話が通りやすくなります。
参考資料
- Anthropic「2026 Usage Policy update」(2026年10月8日)
- Anthropic「Usage Policy」(2026年11月12日施行)
- Anthropic「Usage Policy」前版(2025年9月15日施行)
- 消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」
- 消費者庁「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準」(2023年3月28日)
- Search Engine Journal「Claude's New Rules Target Fake Sources Built To Sway AI Answers」

株式会社MenuMenu 代表取締役
ソフトウェアエンジニアであり、UI・UXデザイナー。2012年からシリコンバレーと韓国でプロダクトをつくってきました。SEO・MEO・AEOの専門家として、訪日観光客と日本のローカルビジネスをつなぐMenuMenuを自ら設計・開発しています。
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